誰にでもある日常の切り取り
内容
『今年のゼリーモールド』『ピザカッターは笑う』
『コーヒーサーバーの冒険』『あのときの鉄鍋』
『水餃子の机』『錆び釘探し』『ホットプレートと震度四』
『さよなら、アクリルたわし』『焚いているんだよ、薪ストーブ』
短篇集
感想
『今年のゼリーモールド』
誰もかれも普段のちょっとしたもやもやがある。
すごく怒り狂うわけでもなくでもなんとなくもやっと
嫌な感じ。でも日々のどさくさにまぎれてすぐそのもやっと
した感じは忘れてしまう。でも何かの拍子に思い出す。
そんなお話だった。だから共感してしまう。
『ピザカッターは笑う』
男女のグループでワイワイしたことも青春したことも
そして夫に昔の彼女に嫉妬することもないし
同窓会に行ったこともない。
たぶん小説に出てきた人たちからはもっとも遠い。
でも親が自分の子供を微笑ましくみているのは
良かった。
『コーヒーサーバーの冒険』
親としたら冷や汗ものだろう。小さい子供が何も
言わずに家を出るとは。事故や誘拐の文字が頭をよぎる。
でもなぜコーヒーサーバーを持って?
子供って大人にはわからない理由がある。
無事に帰ってきたらきっといい思い出になるのかな。
『あのときの鉄鍋』
もしあの時、二人とも違う行動を起こしていたら
今と違う生活をしていたかもしれない。
違う選択が今の生活とは違うものになっているのかも。
その想像はいつまで経っても想像でしかない。
過去へは戻れない。今を生きるしかない。
今までの選択が最良だと思って。
『水餃子の机』
家にもそんなもの(自分ちにしかないもの)って
あったかなと考えた。実家にいた時も今の家にも
ないかも。ありそうでない。でもそう思っているだけで
他の人なら意外にあっさり見つけられるかも。
『錆び釘探し』
雅章は覚悟が足りない。というとまた及び腰になると思う。
でも子供育てるって大変だけど面白い面もあるし
みんなで協力したら意外と楽しいかもよって言いたい。
考えれば考えるほど沼に落ちるけどやってみたら
向いているかもしれないよ。なんとでもなるよ。
『ホットプレートと震度四』
お互い探り合いだけど最後はみんなで笑ってよかった。
美雪と麻子の目が合わせたのも良かった。
お互い探り合いって結構疲れる。何も考えずに気楽に話せたら
これほど楽しいものはない。
『さよなら、アクリルたわし』
悟も紗弓もアクリルたわしと一緒に捨ててしまえ。
そしてこの嫌な気持ちも捨てて新しい生活をして。
彩の新たな生活に幸あれ!
『焚いているんだよ、薪ストーブ』
夫婦同士、仲が良かった人が亡くなるのはつらい。
残された人にどう声をかけていいかわからない。
時間が解決するのだろうけど、それまでどういうふうに
接していいか。つかず離れずなのかそれともずっと
寄り添うのか、年齢が行けば行くほどそういう機会が
多くなる。
佐野さんは立ち直ったけど、きっとそうじゃない人も
いるんだろうなと思った。