「信長」

大タワケモノ!

内容
信長の少年期から桶狭間の戦いまで描かれている

感想
坂口安吾の作品を初めて読んだ。初めてで伝記小説だから
(歴史ものは苦手)最後まで読めるかなと心配になりながら
読んだ。文章にカタカナが入っていて、それが最初は違和感だったが
読んでいるうちにカタカナだからこそ、小説の味にもなるし、
スピード感も醸しだしていてよかった。カタカナでこういう表現の
やり方もあるのかと感心した。

信長は大タワケモノ(大馬鹿者)だった。
”茶筌マゲと云って、マゲをヒモでまいただけのクワイのような頭。
以前からこの頭だが、ちかごろはヒモに趣味がでた。真紅か、モエギに
限るのである。
半袴をつけて外出するが、満足に着物を着ていることがない。片袖を
外しているか、モロ肌ぬぎか、いずれかである。彼の美意識による
寒暑をいとわぬ風俗であった。腰のまわりに火うち袋を七ツ八ツも
ぶら下げている。これの用途は分らない。また、腰の刀には荒ナワか
苧のナワで作った腕貫をぶらつかせている。すべて彼の美意識による
アクセサリーであった。”
信長は今の若者みたいだ。普通では理解しがたいファッションをしていた。
それは今も昔も変わらないかもしれないが、時代背景を考えると今よりもずっと
世間では浮いていたと思う。それでも信長の美意識で唯一無二の存在となりえた。
服装がそうであっても、考え方や行動は大タワケではない。
側近や家来や肉親の裏切りやら政略結婚など、信長を取り巻く人間関係が
複雑になっていく中で信長が、どういうふうに自分をどの位置に置いておくか
負け戦だと分かっていて戦に出るなど信長が二手も三手も先を考えている。
そういうところが面白かった。
もし自分が信長の立場だったら、どの判断でも過ちを犯し、誰かにすぐに殺されるか
戦ですぐ死ぬかで生涯が短かったと思う。

桶狭間の戦いまでしかこの本には書かれていなかった。信長の最後、本能寺の変まで
書かれていると勝手に思っていたが、そうではなかった。信長のどこの生涯を
ピックアップするのかは作者の考えやページ数の関係もある。
でも私は信長の生涯の最後まで坂口安吾作で読みたいと思った。
それくらい面白かった。

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