「怪しい店」

安定の面白さ

内容
「古物の魔」「燈火堂の奇禍」「ショーウインドウを砕く」
「潮騒理容店」「怪しい店」短編集

感想
「小物の魔」
骨董品店が舞台で、設定からして怪しい。いろいろな怪しい人たちが
出てきて、どの人も犯人として疑われる。痴情のもつれ、怨恨、ゆすり
いろいろ考える。それを考え、推理しながら読書できるのは至福の時間だ。

「火堂の奇禍」
古本<燈火堂>のおかしな店主は万引き犯を追いかけたが、持病の心臓発作で
店先で倒れてしまった。その犯人を推理していくのだが、少ない手がかりで
ここまで推理できるものだと感心した。どこがひっかかるのか、私にはまったく
わからなかった。

「ショーウインドウを砕く」
今までの作品と違って、犯人の視点から始まる。前準備や慎重になればなるほど、
犯人の凝り固まった行動が、他の人から見ると違和感が生まれる。
ほんの少しの違和感で普通の人なら気が付かない。私も気が付かなかった。
隠せば、隠すほど他の人にはすぐに露見するのだろうか。下手に隠すということは
すぐに見つかるということを覚えておこうと思った。

「潮騒理髪店」
この短編集の中で一番好きな作品だ。理髪店でも髪を切ってもらい、洗髪し、
マッサージしてもらい、液体石鹸でシェービングしてもらうとは!その描写が
なんとも気持ちよさそうで、読んでいる私まで幸せな気分になってしまう。
私はまだシェービングを体験したことがない。でもこんなに気持ちよかったら
私も体験してみたい。
推理というほどでもないが、想像力を屈指して”こういうことではないか”と考えるのが
いい。証拠もないもないただの頭脳ゲームというのもいい。
こういう感じの作品も大好きだ。

「怪しい店」
自分の秘密は安易に人に言わないという教訓のような作品だ。でも人と話していると
多少自分のなにかしらのことを話している。それを脅迫のネタとできると
思う人はいるのかもしれない。初対面の人ほど、警戒するほうがいいのだろうか。
世の中全員がそういう人ばかりではないとは思うが。
子供ならそういうことを思わないが、大人になればなるほど、素性がわからない人は
警戒してしまう。無邪気に何も考えず、仲良くなれる子供がうらやましい。
火村が確信を持てず、仕掛けた罠だけで真相を突き止めるというのも珍しい。
確率が高い真相を導き出したわけだが、もしも違っていたら?どういう展開に
なるのか。自分で考えても面白い。

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