妊娠カレンダー

意外に怖い

内容
「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食と雨のプール」
短編集

感想
妊娠カレンダー
普段から精神が不安定な姉が妊娠したら、どうなるか。
マタニティブルーという言葉があるのだから、普通の人でさえ
精神が不安定になる。イライラしたり、悲観的に考えたり
負の感情が渦巻く。妊娠した姉の気持ちがよくわかる。
そして姉のイライラする気持ちに巻き込まれる妹もかわいそうなのも。

アメリカ産のグレープフルーツには強力な発がん性や
人間の染色体そのものを破壊すると書かれているパンフレットを見た。
復讐と言えるかどうかははっきりしないが、姉にグレープフルーツの
ジャム(皮入り)を作り、食べさせる。妊娠中で食欲のたがが外れた
姉はグレープフルーツのジャムを食べ続ける。

すべてが不確定要素で発がん性や染色体の破壊と書いてあるグレープフルーツを
食べたからといって、赤ちゃんに直接影響するものだろうか。
もし赤ちゃんになんらかの障害があれば、グレープフルーツだけではないと
思う。けれども普段から従順な妹は姉をどう思っているのかよくわかる。
妹は姉に向かって露骨に自分の気持ちを言わない分だけで心の底では
澱のようにたまっている。そう考えると姉の赤ちゃんが産まれた後のことを
思うと怖い。

ドミトリイ
読み進めるほどに推理小説か犯罪小説かと思うぐらいドキドキした。
行方不明になった学生や寮を訪れても会えないいとこや血と間違えるほどの
粘着力のある液体ができてきたら、これは誰か死んでると勝手に
想像してしまうのは推理小説好きの性なのか。それともそういう方向に
読者を向かわせる作者の力量なのか。たぶん後のほうだと思う。
不思議ちゃんの雰囲気を出しながら奥底では恐ろしいことが潜んでいる。

夕暮れの給食室と雨のプール
登場人物からして奇妙な取り合わせだ。犬のジュジュと私と
宗教勧誘の父親と幼い子供。そして父親がわたしに「僕は雨のプールのことを
考えると、たまらない気持ちになるのです」と告げる。
この時点で??となる。そしてもう少し読むと
”わたしは正直に答えた。
「だって、雨のプールがまだ夕暮れの給食室にまでたどり着いてないじゃありませんか。
ちゃんとそこに到着するまで、責任を持ってくださいよ。」”
この時点でお手上げになった。なぜ話を続けようとするのか。
給食室の話まで行く?その後の話を読んでなんとなくはわかったけれど、
全部が腑に落ちず、もやもやしたまま読み終えた。
私の中では奇妙なまま終わってしまった。

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