疑りだしたらキリがない
内容
柿内園子は天王寺にある女子技芸学校に通い始める。そこで徳光光子と
仲良くなるが、、、。
感想(ネタばれあり)
関西弁で、一方的な手紙形式で綴ってある。地元が関西弁に近いこともあり、
そこまで読みにくいとは思わなかった。でも文章がたまに引っかかることが
あり、そこを何回も読み直していく。徳光光子は若く、美しい。それに加えて
関西弁なので妙に艶めかしい。そんな光子に魅了されていく柿内園子。
今でいうバイセクシャルだ。徳光光子の裸を見た柿内園子は涙がでるほど美しいと
感じるけれど元からそういう素質なのかもしれない。
私は学生のころBLが好きで、もしかして宝塚も好きかもしれないと思い、観劇したことが
あった。だが自分が思ったのと違ったのか、それともメイクがだめだったのか
演劇そのものがだめだったのかわからないが結局はまらなかった。それからは
観ていない。私にはそういう素質がない。
徳光光子は美しいがゆえに他の人を振り回す。それも意図的になのかそれとも無意識なのかわからないが(無意識なら余計怖いが)他の人を自分の意図したように動かす。光子が直接言ってはないが、園子からこうしたらいいのではと提案したり、発言したりしたりするのだが、もしかしたらそれも光子の手中にはまり込んでるとしたら。
私の周りにはそんな光子のような人はいない。でも(特に女性が多いのではないか。)近くにそういう人がいるのだったら(そういう性格がわかっていれば)いつでも気を抜かず、どこまでも考えてしまって一緒にいるのが辛くなって離れていく。でも私はそういうことには
疎いので気が付かず、一緒にいて振り回されていると思う。
真面目な園子の旦那はあっという間に光子に魅了されてしまう。夫婦そろって光子の
言いなりになる。最後に三人で薬を飲み、自殺を図るが園子だけ生き残る。
それは光子が意図してそうしたのか、それともたまたま園子の薬の量が少なかったのかは
わからない。
谷崎潤一郎の作品を初めて読んだ。少しは色恋のことを書いていると分かっていた。
でも、この本を読むと色恋だけではなく、人間の嫉妬や駆け引きがあり、
ミステリーの要素がある。昔の人だからこそ、人間くさいドロドロした作品が書けるのか。
他の作品も読んでみたい。