琥珀のまたたき

ずっとこのままで

内容
前の家を引き払い、昔パパが仕事用に使っていた古い別荘に
引っ越した時、ママに前の名前は忘れるように言われた。
子供たちは新しい名前が必要になった。

感想
子供にとって母親はどんな頓珍漢なとんでもないことを言っても
信じる事しかできない絶対的な存在だ。
例えば、琥珀の母親は子供たちに禁止事項として壁の外に出てはいけない、
前の名前を言ってはいけない。
そして子供のことを考えず、素っ頓狂な母親の考えで、服のサイズよりも
鬣や尻尾や王冠を着けるほうが大事になっている。勉強するのも
パパが作った図鑑でしか勉強できない。
だが、子供がだんだん自我が出て、物事の判断ができると母親がどれだけ自己中心的で
子供にとって害悪でしかないこと、母親の言っていることが齟齬があることが
子供たち自身で気付いてくる。
オパールは早くからそのことに気が付いていた。オパールが家からいなくなる少し前に
琥珀に伝えている。そして瑪瑙も一番末っ子らしく(一番の末っ
女の子は亡くなってしまった)好奇心のほうが勝る。カエサルの鳴き声で壁の外に
出てしまう。
しかし琥珀だけはたぶんずっとオパールと瑪瑙とママとそして左目の中にいる
末っ子の妹とずっとこの壁の中の生活を続けたかったのではないかと私は
思った。いつしかオパールの図鑑と琥珀の図鑑がトンネルになるまで続けたかったのでは
なかったか。服のサイズが小さすぎても、髪の毛が長すぎても、物がなくても
壁の中では、それが普通だったら琥珀にとっては取るに足らないことかもしれない。
それよりも大事なのは壁の中の生活だけが続き、図鑑に左目に見えていることを
書くことが重要だった。

オパールや瑪瑙が居なくなったとたんに、ママは自殺した。
それは読んでいる私には意外にショックだった。オパールや琥珀や瑪瑙や亡くなった
末の妹のことを大切に思っていないと感じていたからだ。
だが、違った。誰よりもママは子供たちのことを思っていた。
ママなりの愛し方で愛していた。だから子供たちが次々いなくなった時には
もう生きていけないと思って自殺したのではなかったのか。
共依存から一方通行の依存に変わっていった瞬間がママにはわかったのかもしれない。
壁の中の生活をママの所為でこうなったのだと決めつけられない。
オパールも琥珀も瑪瑙も結局は壁の外の世界に行ったのだから。
だが琥珀だけはもしかしたら、まだ壁の中の世界にいるのかもしれない。
ずっと図鑑にオパールや瑪瑙や末の妹やママを記録し続ける。
ずっとみんな一緒だよねと思っている。きっとその一瞬が幸せだと感じている。

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