小川糸の本だからほんわかした内容だと思ったらそうではなかった。
読み進めるといつものふわふわしたのではなく
これはちょっと気持ちがざらっとする内容かもしれないと思った。
主人公のとわの目線で話が進んでいくので現実的な生々しさはない。
でも読んでいるとこの状況がいかに異常かがわかる。
母さんが仕事の時に排泄ができるのにオムツを穿かせたり、
ネムリヒメグスリを飲ませたり、子供にすることではない。
早くこの状況をなんとかしてもらいたい。脱出しなきゃという気持ちで
読んでいた。でも、もしかしたらこのままに死んでしまうかもと想像しながら
あっという間に読んでしまった。
後半はやっと世間にとわが(新しく名前をつけてもらったが十和子)
認められることで普通の人が体験する。人との交わりや恋愛などなどを
盲導犬のジョイと一緒に人間らしい生活をしていく。
十和子は盲目なので花や草木の香り、人のにおいを頭の中に刻み込んでいく。
点字や音声アプリにも頼るが基本的ににおいで区別するのかもしれない。
私はにおいに対してそんなに執着したことはない。花の香りも草木のにおいも
人のにおいもなにげなくにおいがするなと思うだけだ。強烈なにおいは嫌悪しかないが。
なんらかの障碍を持っていたらどこかの体の部分が特化するのかもしれない。
十和子が母さんにされたことには腹が立つ。
盲目になったのも(きちんと病院に行ってれば盲目にはならなかったかもしれない)
無戸籍になったのも、十和子の前に生まれた二人の兄さんも亡くならずにすんだかも。
そう思うと母親の身勝手と知識がなかったせいで十和子の人生は狂わされた。
母さんに物語を読んでもらったり、唯一の誕生時会を母さんとローズマリーとしたり
甘い思い出もある。それでも母さんにされたことを差し引きするとやっぱり憎む感情が
出てくるのではないかと思うが、十和子は唯一絶対の母さんに対しての深い愛情しかない。
でも子供ってそういうものかもしれない。子供が自分の身近に頼れる大人は親しかいない。
だから親がどんな身勝手なことをしても子供は善し悪しの判断ができないし、親しか
頼る人がいないから親の言うこと(理不尽なことも)を聞く以外ない。
ましてや外の世界と遮断され、閉鎖的な家庭内だったらと思うと恐ろしくなる。
それでも困っている親が”困っています。助けてください”言える世の中になったらいいと思うし、それに対応してくれる優しい社会になってほしい。