「廃用身」

フィクションかノンフィクションか

内容
「廃用身」とは脳梗塞などで麻痺で回復の見込みのない手足のことだ。
その「廃用身」をデイケア施設の医院長漆原は切断することを思いつく。

感想
介護現場が過酷な現場というは聞いたことがある。
排泄物や食事、徘徊、暴言それが日常茶飯事だ。
介護する人は介護者を運んだりするときに腰痛になるのが
ほとんどらしい。それらのことを仕事としてしている人を
尊敬する。

この本の構成と話を読んでいると途中からフィクションかノンフィクションかが
わからなくなってくる。これは現実にあったことなのだろうかと思わせる。
それに「廃用身」を手術で切断して失くすメリット(動かない手足が何かをするときに
邪魔になるけれど、切断してしまえば他の手足は動かしやすいとか血流が切断した手足にいかないようになり、その分、頭や生きている手足に血流が行くようになって、痴呆が改善するかのように書かれている)の方が大きい。最後まで読むとそれが本当にメリットになるのか疑わしくなるのだが。ただ介護する側は体重が軽くなるのでそれはメリットがあるのでは
ないだろうか。

自分が介護される側になって、もし「廃用身」の話がきたら、どう答えるのだろう。
現実にはほとんど可能性がないとは思っても、もしそういう状態になってしまったら
「廃用身」を受け入れられるのだろうか。家族や介護する人たちのことを考えると
自分の意志とは関係なしに「廃用身」を拒否できないような状況になってしまうのではないかと思う。そう思うと恐ろしいし、死を考えてしまう。

著者の紹介で「廃用身」がデビュー作と書いてあった。こんなに凄い作品が
デビュー作とは。世の中凄い人がたくさんいるものだなと実感した。
後から読み直したら推薦の言葉で精神科医の春日武彦が載っていた。
医者同士だからか推薦の言葉で”傑作である”と書かれていて、読む前に
推薦の言葉を見ていたらハードルは上がっただろうが、それにも負けぬぐらい
面白かったので、ほかの作品も読みたいと思う。

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