「死者の奢り」

生々しい

内容
「死者の奢り」「偽証の時」「飼育」「鳩」
「奇妙な仕事」「人間の羊」「他人の足」短編集

感想
「死者の奢り」
特殊なアルバイトで多分、私だったらいくら時給が良くても
やらないアルバイトだ。
死体にも、死体が裸という状態(溶液の中で服を着ている
のも変だが)にも慣れてない。それに臭いがだめだ。その臭いに慣れるまで
時間がかかる。死体に対しても罪悪感がある。
触れてはいけないことにずかずか入り込んでいくようで気が進まない。

「偽証の時」
監禁された贋学生が強度の神経衰弱で、監禁した学生は見逃された。
監禁された贋学生には誰も味方がいない。そんな事がある?と思うのだが
意外にそういうことは多いような気がする。例えば、おおかみ少年の話とか。
意図的に犯罪を隠すことはあるけれど、意図に反して犯罪が発覚しないことも
あるんだろうなと思った。でもそれは犯罪を犯した者はずっとおびえていなくては
いけないのだろうけれど。

「飼育」
戦時中に敵の飛行機が墜落し敵兵を村で囲い、だんだん子供たちと仲良くなる。
しかし敵兵が町に引き渡される時、敵兵は抵抗し、子供の一人を人質にする。
敵兵(黒人兵)の今まで仲良くしていた子供を人質にとることに、やっぱり
敵兵に対して自分のほうが大事なのだなと思った。戦時中の状況で
町に連れていかれれば、何をされるかわからない恐怖や不安はわかるにしても
子供を人質にとるのはいただけない。それにもまして子供の親が取った行動のほうが
残酷だと思う。

「鳩」
平均十四歳の少年院の中の少年の鬱屈した感情と、罪悪感とそれに反しての
周りの賞賛。それらのことに対しての混ぜかえった気持ちがよく出ている。
罪悪感から少年は自分を傷つけようとして気持ちに決着をつけるように終わる
のも良かった。

「奇妙な仕事」
犬を殺して処理をする仕事だが、残酷すぎて絶対無理。
犬殺しは犬に対して残忍だと思われているが、犬殺しには犬殺しの犬を可愛がる
気持ちがある。犬は殺されるのは同じなのに、毒で殺さないし、
食事は与える。それぞれの行動が相反している。
犬殺しには犬に対する何らかの境界線があるのだろう。他人からには
わからないが。

「人間の羊」
これを読んだ時、性被害にあった人のことを思い出した。性被害にあったことを
人に話すのは思い出したくもないし、恥ずかしい。でも被害届を出さないと
警察に受理してもらえない。だから性被害をなかったことにしてしまった方が
心の傷も深くならないのではないかと考えている人が多いと思う。
だがこの教員は人の気持ちをわかったふりをして、被害者に被害届を出せと
迫っている。何がこの教員にこういう気持ちにさせたのか。もしかして
教員も同じ目にあっているのだろうかと考えてしまう。

「他人の足」
脊椎カリエスの療養所に両足にギプスを付けた男が入ってきた。
閉ざされた療養所に入って、男は外部のことを療養所のみんなに教える。
教えられることが偏ったり、鵜吞みにするとそれが良いことか悪いことかが
判断がつかなくなる。確かめるすべもない。閉鎖的なところにいれば、
なおのことだと思う。その男を信じるかどうかしかない。
教育も一歩間違えばそういう危険性があると思う。特に子供は
判断ができないのだから。

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