「名短篇、ここにあり」

短篇もすごい!

内容
北村薫、宮部みゆきが選んだ短篇集。

感想
「となりの宇宙人」
宇宙人が擬人化?されていて、普通に人間に看病されたり、
食べ物を差し入れされたりして宇宙人ってこんな感じ?とちょっと
ユーモラスだ。もっと宇宙人って地球人に脅威的なものと
思っているのは映画だけなのか。話のオチもよかった。

「冷たい仕事」
冷蔵庫の霜を取る話。なんのこっちゃと思う。そういえば、
昔の冷凍庫によく霜が付いていたなと思い出した。霜が
冷凍庫の中を占領して冷凍するものが入らないことがよくあった。
その霜を取るのはきれいにごそっと取れると気持ちがよかった。
これは霜を取った人しかわからないかも。

「むかしばなし」
お婆さんにからかわれた話。でもこれが聞き手だったら
信じてしまうかも。話し上手なほら吹き婆さんだけれど、
もしかしたら現代だったらお金が取れるぐらい。
騙されるということはそれだけ話上手だと思う。

「隠し芸の男」
新年宴会で恒例の裸踊りをする。それもいい年のおっちゃんが。
会社でも立場や部下と関係を円滑にしたいという背景が余計に
哀愁漂う。私もいい年のおばちゃんだから、もし会社員だったら
裸踊りはしなくても宴会で何か一芸しないといけないのかなと
考えてしまった。

「少女架刑」
この話が短編集の中で一番印象に残った。死体を解剖されるから
グロイ。それに死体が生きているような目線で状況を説明する。
グロさに加えてエロも要素がある。死体だから痛くはないのだろうが
骨の切断や臓器を取られる描写を読んでいるとこっちまで
痛くなる。それにもまして母親が残酷だった。

「あしたの夕刊」
新聞の一面だけ未来の記事が載っている。少しだけ未来が分かるのなら
私ならどうするだろうと考えた。だがこの短篇のように未来を
変えすぎると自分という人間がいなくなるかもしれない。
それなら少し先の未来を変える必要はない。今のままでいい。

「穴-考える人たち」
この短篇はどこにオチがあるのだろうと考えた。それとも
オチを考えてはいけない話なのか。何とも不思議な話だ。
最後に解説されているがあまり深く解説していなくて、
結局私にはわからなかった。もっと深読みすればいいのか?

「網」
菜村雪夫は医師のくせに間が抜けている。泳ぎの達者な鯉淵を
プールで溺れさせて殺害しようとしている。けれど毎日プールで
泳いでいれば水に慣れていると思わないのだろうか。
わざわざ自分で投網を作って投げる練習までして。
やっぱり間が抜けているとしか言いようがない。

「少年探偵」
とにかく安男はかわいい。少年らしくて最後の少年探偵足立君に
挑戦するところもいい。こういう子供が読んでも害がない話も
私は好きだ。推理小説の部分もあり、安心して読めるのもいい。

「誤訳」
さすが松本清張だなと思った。誤訳の本当の訳(憶測だが)あって、
納得できた。やっぱりどこの家庭でも妻は強しなのかな。
特に金銭問題になると、家計を預かっているほうが切実だもんなと
実感した。

「考える人」
”どうしてこのように現世は生きにくかと考え続けていたように、木乃伊に
なってからも考えていた。衆生を済度するどころではなかった。木乃伊に
ならなければ生きられなかった自分を、生きている時と同じように、木乃伊に
なってからも考えていたのだ。”
宮部みゆきが線を引いた箇所に私も引っかかった。逆に言えば生きやすくすれば
どうすればいいのかという問題なのだろうか。

「鬼」
一言で言えば、ホラーだ。土岐華子も母親と同じように、だけれども
自覚がないまま”鬼”になってしまった。それを自覚したらこそ日本を
離れた。自分ではそうはならないと思っていても”鬼”の力が強いのかそれとも
宿命なのか。土岐華子を不憫に感じてしまう。

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