病と老いには抗えない
内容
母親が介護老人保健施設に入所した。自身に手が空き、
自分の身体に症状が出ていたので検査を受ける予約をするのだが。
感想
作者の本を二冊ぐらい読んだことがあるのだが、エッセイと
ギャップがあって驚いた。うろ覚えだがこの作者の小説はちょっと硬めの
ものだったような気がするが、これは作者の性格がそのまま出ていて
面白かった。小説が面白いならエッセイも面白いのか、また逆も
然りなのか。
女性はいくつになっても乳がんの可能性があるらしい。
乳がんに罹るのはせいぜい50代ぐらいまでと思い込んでいたが
90歳になっても罹る人はいる。作者も60代で乳がんになったと書かれている。
私自身は乳がんに対しての知識がほとんどなく”乳がんに罹ったらどうするか
選択肢はどういうものがあるのか”が分かって凄くためになった。
乳房の温存や摘出のメリット、デメリットと術後のこともしっかり書かかれていて
よかった。
認知症が進んでいる母親を自宅で介護していたこと、老健から退所勧告され、
次の施設を探すのに奔走する。ここでも”もし親や自分自身が認知症になったら
どうすればいいのか”ということがわかった。
要介護者の健康状態や寝たきりやそうではないか、それとともに
その人の性格も併せて、施設を見学をしまくり、要介護者にあうかどうかを決める。
それを決めるのも本人ではなく、今までも介護者が決めるのだから
要介護者本人が全面的に納得していくわけではない。それでも
今まで介護者が要介護者に寄り添って、部屋を今まで過ごしてきた
ところに近いようにする、2〜3日おきに面会する、などなど。
施設に入れたら終わりというわけではないのだ。
本を読んでいると介護する側とされる側の需要と供給が伴ってないと痛感した。
ますます要介護者が増えるのにどういう対策をしたらいいのだろうと考えてしまった。
介護職の給料や待遇面をもっと魅力的なものにしないといけないのではないか。
そういうところをみんなに考えてほしい。
”がんに限らず、中高年になればだれでも持病の一つや二つは持っている。
病と共存するにしても、早期発見早期治療を現実するにしても、ますます自己管理の
重要性は増してくる。「病気なんだから、お前が面倒みろや」とふんぞり返って
いる場合ではないのだ。”
これには耳が痛い。私は「病気なんだからお前が面倒みろや」と言いそうで怖い。
病や老いに抗えないけれど、最低限の抵抗(自己管理)はしないといけないということか。