「55歳からのハローライフ」

定年後、老後どう生きるか

内容
まさに題名の通り55歳からどう生きるか。中篇小説。
「結婚相談所」「空を飛ぶ夢をもう一度」「キャンピングカー」
「ペットロス」「トラベルヘルパー」

感想
・結婚相談所
読んでいる時はそんなに思わなかったが、思い出してみると登場人物
がほとんど嫌いだ。
中米志津子の定年退職した夫は点けっぱなしのテレビに向かって
一日中文句と愚痴を言うようになった。それがいやで離婚をした。
離婚後、結婚相談所に入った。結婚相談所に入った理由はふたつ。夫以外の男と性的なことも含めて付き合うのと経済的な理由だ。ここまで読んでこの主人公とは絶対友達に
ならないと確信した。
定年後に夫といるのが苦痛というのはよく聞く話だが、離婚にまで進むのは
経済的に自立しているからできることだと思っていた。しかし中米志津子は多少の
財産分与だけもらって、離婚してあげくに結婚相談所に行き、経済的なことを求めるとは
なんて浅はかな人だろう。それにこの年齢で男と付き合いたいってどういうことか。
年齢が近いだけに離婚することも、男と付き合いたいと思うことも理解できない。
この年齢で一から人間関係を構築すると思うとうんざりしてくる。
おまけに結婚相談所はデリカシーのない男ばっかりで、結婚相談所ってこんな人ばっかりなのかと呆れた。バーで会った男もめそめそ泣いているし、なぜかその男とも寝てしまう。
あげくのはてには元夫と会って、元夫はよりを戻したそうにしている。全員がどうしてこうも、嫌悪感ある人々がでてくるのか。でも嫌悪感があるのはなぜかと考えてみた。
うらやましいとか嫉妬するとかではない。ただ自分とは交わらない人たちだからかもしれない。出会っても、深入りせず、自分から離れていく人ばかりが出てくるからだ。それと考え方が相反している。中米志津子は変化を求めているが、私は保守的だから(たぶん今の生活に満足している)変化を求めてない。それとも単にあさましい女とデリカシーのない男と女々しい男が嫌いなだけか。

・空を飛ぶ夢をもう一度
前の結婚相談所が気持ちの中で嫌な感じがして、次も嫌な感じがしたら読むのをやめようと思った。でもこの話は前の話を挽回できるまで行かないが、気持ちが少し温かくなる。
最後のほうで腰痛持ちの因藤は病気の福田を母親指輪を返すためにに会いに行かせる。
公共交通機関を使って会いに行こうとするが、途中福田は意識がなくなり、因藤は救急車を呼び母親に知らせる。帰宅が遅くなった因藤は妻にその日あったことと、五千円近くつかってしまったことを話した。
”妻は遅い夕食を作りながら、いいことをしたね、と微笑んだ。”
ここが印象的ですごくよかった。仕事もないし、貯金もない。なんとかしないといけない場合なのに、”五千近くもつかってしまった”は私だったら激怒するけど、因藤の妻は微笑んだ。因藤の夫婦のように少しの思いやりが結婚生活を長続きさせる秘訣なのだろう。

・キャンピングカー
早期定年退職をした富裕は妻に秘密にしてキャンピングカーを買おうとしていた。
だが家族にそのことを打ち明けたとき、妻と娘は富裕が思っていた反応ではなかった。
妻は経済的な理由と自分の時間を確保したいということでキャンピングカーの購入に難色を示していた。娘に相談すると再就職すればいいのではと言われる。再就職すれば経済的な
理由は解消される。だがいざ再就職するのに悪戦苦闘する。
中堅の会社の営業にいたら、それなりに仕事もやってきたし、プライドがある。
特に高度成長期の時代に働いてきた年代には自分の仕事のやり方のことが忘れられずにいる。今の時代に合わず、自分のやり方を通そうとする人がいる。富裕が再就職しても
疎外されて、富裕自身が悩むのが目に見える。
富裕は精神的不調で心療内科を受診することになる。その心療内科の先生が言うには
”正確には、トミヒロさんが、奥様には奥様の時間があることを、受け入れたからなんです。”
これを読んだ時、そんなことも男の人はわからないのかとびっくりした。いつも自分の
所有物のように考えている、昭和の男はこう考え方が多いから自分とは合わないのだと
変に納得してしまった。

・ペットロス
私もかつて猫を飼っていた。でも高巻淑子のようにこんなにも冷静でいられなかったし、
夫を観察している暇もなかった。猫が亡くなったとき、自分自身のことでせいいっぱいで夫がどんな姿をしていたかも思い出せない。それぐらいショックだった。
自分と他の人でペットロスを競うつもりはない。だが高巻淑子は本当にペットロスだったのかと疑ってしまう。そもそもボビーを大事にしていたのか。大事にしていたら年に一回の検診は行っていたのでは。ただかわいがるだけではいけない。ペットを飼うということは
金銭的にも余裕がないといけない。病気にかかるかもしれないし、怪我をするかもしれない。それにいずれ亡くなることも考えておかないといけない。亡くなることはわかっていてもいざ亡くなるとひどい喪失感になる。それらがすべて分かっているうえでペットを飼ってほしい。無責任にかわいいだけでは飼ってほしくない。

・トラベルヘルパー
トラックドライバーだった下総源一は独り者だ。古書店で堀切彩子と彩子と出会い、ファミレスでデートをするようになる。下総は自分の話ばかりしているが堀切は自分の話をしない。それでも下総は堀切に惚れている。六十過ぎのおっちゃんがと思うが、まさしく
老いらくの恋。。しかし堀切は結婚していて病身の夫がいることがわかる。
そのことがショックで何も考えずに幼いときに祖母と一緒に住んでいた伊勢志摩に行った。
港にいたときに漁協関係者と間違えられて、介護旅行の会社の人たちから名刺を渡された。
そこにはトラベルヘルパーと書かれていた。トラベルヘルパーという言葉から下総は堀切と夫をワゴン車に乗せて旅に行く光景が消えない。
下総は良いおっちゃんだろうなと思う。昔はよくスナックなどに行って女の子を口説いてたらしいが口ばっかり達者で深い付き合いまで行かないのだろう。一度の結婚で他に縁がなかった。たまたま堀切と出会うことができてよかった。出会ったことには下総は後悔はしていない。だが堀切とは付き合うことはできないが、堀切夫妻とは付き合いができるかもしれない。そこまでしてまで堀切と一緒にいたいと思う気持ちは最後の老いらくの恋だからなのか。それともこの年齢だからこそ、気持ちが寛容になったのだろうか。

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