if(もし)今と違う選択をしていたら
内容
「シンラ智慧の会」に関係した人々の話。キーワードは「シンラ智慧
の会」のシンボルの黄金蝶。
感想(ネタばれあり)
宗教はどうして、のめりこんでいくのだろう?耐え難い不安や怒りがあるからか。
それとも某宗教のように超能力や幽霊がきっかけなのか。それとも瑠璃の母親の
繭子のように市販のシャンプーが合わなく、オーガニックショップのシャンプーが合い、
そこからオーガニックショップの物を買い、そこでのサークルに入ったことで
シンラ智慧の会に落ちていくのか。
私も子供が小さいときにもっと安全で安心な食べ物がいいのではないかと考えたことが
ある。でもよく考えたら割高だ。それに以前から食品偽装の問題もたくさんあった。企業がいくら”ここのものは安心安全です”と言われても確かめる術がない。
考えを突き詰めていくと結局自給自足しかないだろう。自分で田んぼをして、牛、豚、鳥を飼い、魚を取る。採り方、肥料のノウハウも勉強しなければならない。時間や体力のことを
考えたら、市販の食べ物で折り合いをつけるしかない。
近親相姦では子供が生まれたらどれくらいの確率かわからないが先天性異常が出ることが
ある。天堂光翅こと卯藤新は自分の祖父と母親から生まれた子供だ。たまたま先天性異常がなかった。その卯藤新は「シンラ智慧の会」の大師(マスター)になっているのだが
周りの証言だけで実態がない。少年時代のマンザイで出てくるがその時に何を考えて
行動したのかがまるでわからない。マンザイと宏道で宏道の父親のような男を殺害しようと計画したが二人が実行する前にその男は殺されてしまった。宏道はもしかしたらマンザイが殺害したのではないのかと思う。でもそのことについても謎のままだ。
卯藤新がこの話ではキーパーソンで中心にいるのに実態がない。まるでドーナツのようだ。
普通ならこれだけ中心にいる人物なら生い立ちやなぜ教祖になったか描かれていそうなのに
それがまったく書かれていないのにその人物に周りの証言だけで人物が浮かび上がってくるのがすごい。こういう書き方もあるのだなとこのことが分かったとき感動した。
卯藤カナの卯藤新を生んだという選択で「シンラ智慧の会」が出来て、その宗教がテロ事件を起こした。もし卯藤カナが新を生まなくても違う宗教ができ、地下鉄でテロを起こして新が起こしたテロ事件よりも多くの被害者がでていた。
卯藤カナほどの人生最大の選択ではないにしろ、些細な選択から人生最大の選択はいつもある。服や食べ物から仕事、結婚、子供その他もろもろ。それらは自分が決めた選択だからこそ後悔しない。どんなに失敗しても最後は自分で決めないとずっと後悔することになる。