「稔と仔犬」「青いお城」を読んで

遠藤周作の作品を読むのは3作目、4作目となった。
遠藤周作初期童話と書いてあるのですぐ読めるのと
子供向けに書いてあるので読みやすそうだと思い選んだ。
カトリック青年労働者連盟発行とあるので宗教色の強い
話かと思ったが意外にそうではなかった。
(教会とか神父さんはでてくるが)

「稔と子犬」では1955年の連載されたものだから
戦後の設定で書かれている。その当時は裕福な人はより裕福で
貧しいものはより貧しく、今のように中流がいなかったのかもしれない。
主人公の稔も母親と祖母との暮らしで母親は泊りのある病院の仕事で、
けっして裕福ではない。ある時叢の中から、仔犬が出てきて
稔に駆け寄ってくる。仔犬の悲しそうな眼を見るとなんとかして
あげたいと思ったが、自分の家では飼えない。途方に暮れて
野原にいたがいつの間にか眠ってしまった。
夢の中の内容が稔の願望のものだったのか、とても美しい夢だった。
夢と現実の差がありすぎて、稔にとってはつらいと感じることが
よくわかる表現だ。
シンプさんとの出会いで仔犬に名前を付けてもらい、シンプさんに
飼ってもらうことになった。
仔犬のことで稔は学校の人気ものになったがそれを気に入らない
村上君が稔を脅して教会に一緒に行き、マリア様の像を空気銃で射るか
仔犬を射るか。
選択はマリア様の像を射るか、仔犬を射るか、両方とも断るか。
答えは最後の一行に書かれていると思う。

「青いお城」は「稔と仔犬」と比べて長かったが、昭和のドラマを
みているようで面白かった。
おサルのような顔をした、頭に十円銅貨ほどのハゲがある平吉が
転校してきた。先生はたえ子に平吉のなれない学校での助けをお願いする。
たえ子は平吉を初めは好きではなかったが、いじめられっこに
助けてもらったり、バレエを一緒に見に行ったりして仲良くなる。
平吉はたえ子の願いに対してそれを叶えようとしてバレエの北川れい子の
サインをもらいに行ったり、北川れい子にバレエを習いたいとたえ子がいえば、
平吉が習わせてくれと頼みに行ったりと平吉の行動力にもすごいと思うし、
自分のことではないのにこんなに一生懸命になることがあるんだろうか
と疑ってしまう。

平吉は母親はいないが神戸で生きていることは知っている。たえ子はバレエの
東京代表で神戸に行くことになった。
平吉も神戸に行くが母親には、最後に会えるか。
ちなみに最後は少し泣いてしまった。

初期童話と書いてあったが子供も大人も感情が豊かになる一冊だ。
戦後の時代の童話だが人間の感情はそんなにも変わらないのかもしれない。

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