野火

どこまで正気を保っていたのか

内容
レイテ島に上陸してまもなく、私は軽く喀血した。
以前の病気が昂じ、三日間入院をし、軍隊に戻ったが
分隊長に「役に立たねえ兵隊を、飼っとく余裕はねえ。
病院へ帰れ」と言われてしまう。

感想
こんな体験をすれば誰もが正気を保つことは難しい。
食料もなく、林や森を彷徨い、アメリカ兵に狙われ、
いつまでこの状態が続くかわからない。今までそばに
いた仲間や兵は倒れ動けなくなって、怪我をした部分からは
蛆が湧き、死んでいく。自分もこういう風に死んでいくと
思うと恐怖感がせり上がってくる。こんなことをずっと
見ていたらいつ発狂してもおかしくない。

第二次世界大戦後、精神が壊れた人がどれだけいるのだろうか。
なにかの本で戦後、精神に異常があった人がどれだけいたのか
わからないそうだ。調べる機会になかったのか、それとも
意図的に調べなかったのか。
想像するに相当な数はいたのだと思う。戦争という名のもとに殺人や
迫害が当たり前のように行われて、気が狂わないわけがない。
戦時中に精神に異常がなくても、その後の人生には大きな
傷跡を残すはずだ。

今まで戦争に関するいろいろな切り口の本を読んできた。
なぜ敗戦したのか、満州での日本人のやり方、レイテ島での
出来事などなど。まだまだ戦争の本を網羅したわけではない。
だが、そもそもなぜ戦争をするということを選択したのかがわからない。
そんなに領土がほしかったのか。日本の力を世界に誇示したかったのか。
それとも人は根底で戦争をすることを好むのか。
なぜ開戦になったのか。まだそういう本を読んでいないし、
もし、戦争という選択をせず、違う道を選んだのなら、日本はどうなっていたのか。
今度はそういう本を読みたい。

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