「桜の森の満開の下」

欲望の塊

内容
鈴鹿峠の桜の森の花の下を通ると気が変になってしまうので
誰も通らなくなり、そうなって何年後かに一人の山賊が住むようになった。

感想
山賊も残酷だが、それ以上に八人目の女房が残忍だ。
だんだん上下関係に(八人目の女房になった時から上下関係は
はっきりしていたのかも)出てきて、八人目の女房のいうことを
山賊はなんでも聞いた。八人目の女房になった女が山賊に他の女房を
殺してと頼んだ。山賊は人を殺すことを何とも思っていないから
一番醜くてビッコの女房だった女だけを残して、他の女房は
全て殺した。
八番目の女房は大変わがままだった。どんなに豪華な料理にも満足せず、
挙句の果てには都へ行きたいと言った。山賊は八番目の女房の
いいなりで都に行き、女の命じる邸宅に忍び入り、着物や宝石や装身具を持ち出した。
女が何よりも欲しがるものは、その家に住む人の首だった。

読み返してみると、八人目の女房としてさらった女は、もしかすると
女が山賊を選んだのではないかと思えてきた。それもこれも桜の森の花のせいで
山賊は幻惑された。
八番目の女房は鬼だったわけだが、鬼は世俗には無関心だというイメージがある。
山の中で人間の肉を喰らって生き長らえている話が多いからかもしれないが
鬼=人間の欲望と考えるとおかしくはない。
人間は物欲に限りがないし、常に自分が一番にいたい、だが寂しいから
誰かにいてもらいたい。これらがこの鬼の行為にすべて出ている。
人間のむき出しの欲望が鬼の行為とリンクする。
子供の読み物だと思っていたら、意外と大人のほうが響くかもと思った。

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