「仁木兄妹の探偵簿雄太郎・悦子の全事件①兄の巻」

the昭和

内容
植物学を専攻する大学生の仁木雄太郎と音大生の仁木悦子の
兄妹が事件を解決していく。

感想
作者を知ったのは『私家版 精神医学事典』で紹介されていたからだ。
確か日本初のミステリ女流作家と紹介されていたと思う。
初めて名前を知ったとなれば、ミステリ好きの私には
読まないわけにはいかないと思って読んでみた。

兄の雄太郎が植物学を専攻する大学生で、植物から事件を解決する。
「黄色い花」はとろろあおいの花を切って花びんにさすと、非常に
早くしおれる。茎からねばねばした液が出るため切り口をふさがれて
水を吸いあげることができないからだ。そういうところから事件を解決する。
これを読んでいて川瀬七緒の「法医昆虫学捜査シリーズ」を思い出した。
ウジの成長度で殺害された時間を特定するなどがあったと思う。
植物や昆虫など自然界の物が事件を解決する鍵をもっていると
なぜかワクワクする。人間のように自然界のものはウソがつけないからかも
しれない。

何作か載っていたが、この中で私が一番好きな作品は「ただ一つの物語」が
好きだ。悦子は結婚して子供が二人いる。子供の名前が哲彦と鈴子なのだが
悦子が子供を呼ぶとき、テッチンとスウ子と呼ぶのがすごくいい。
the昭和感が出てて、そういえば昔の昭和のドラマも主人公やその他の人たちにも
あだ名が付けられていて、みんなそれで呼ばれていたなと思い出した。
七重が病気でベットに寝たきりという設定も、ぬいぐるみのクマのべーちゃんの
中に宝石を隠して、悦子に託したことも私好みだ。
作者の仁木悦子も幼いときに胸椎カリエスに罹り、寝たきりの生活を余儀なくされる。
そこのことで、木崎七重と自分とを重ね合わせて、このミステリを思いついたのかもと
思うと少し悲しい気がする。だがこの大変な自分の経験が活かせるようにしたのは
凄いと思った。

またこの作者の妹編も読みたい。トリックもわかりやすいし、文章も
読みやすい。それに昭和感も満載で、きっと妹編でも私好みなんだろうなと
思うとつい期待してしまう。

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました